▼ 平成18年度「日本陶磁協会賞」が1月24日(水)に選考されました。今回は候補者として、協会賞25名、金賞21名の推薦を下記の推薦者よりいただきました。
推薦者は石崎泰之氏、乾由明氏、井上隆生氏、榎本徹氏、正村美里氏、杉山道夫氏、竹田博志氏、外舘和子氏、林屋晴三氏、藤慶之氏、山本真由美氏に加えて、新規に和泉周一氏、梅田稔氏、黒田耕治氏、斉藤武男氏、嶋田健治氏、花里麻理氏、福島建治氏、南邦男氏に推薦していただきました。これまでの学芸員、ジャーナリストのほかに、ギャラリー関係者にも参加していただきました。来年は、コレクターにも参加していただくつもりです。従来、協会賞の選考委員は、研究者、業者、コレクターの三者によって構成されてきましたので、推薦者もこの三者によって構成してゆきたいと考えております。
候補者の略歴および推薦理由を付して、選考委員(梅澤信子氏、金子賢治氏、唐澤昌広氏、黒田和哉氏、中ノ堂一信氏、西田宏子氏、長谷部満彦氏、宮島格三氏、弓場紀知氏、吉田耕三氏、森孝一)の諸氏に送りましたところ、次の方々が候補として残りました。
点数の高い順に示しますと、金賞は加藤清之氏、鯉江良二氏、中里隆氏、徳田八十吉氏、深見陶治氏、原清氏、三輪休雪氏、平川鐵雄氏、酒井田柿右衛門氏、古川章蔵氏、隠崎隆一氏、栄木正敏氏、前田昭博氏の以上13名でした。
協会賞は杉浦康益氏、武腰潤氏、三輪和彦氏、福島善三氏、中島晴美氏、三原研氏、加藤委氏、久保田保義氏、近藤高弘氏、内田鋼一氏、勝間田千惠子氏、崎山隆之氏、金子潤氏、西端正氏、松本ヒデオ氏の15名でした。
先にも述べましたが、1月24(水)午後3時より和光7階会議室にて「平成18年度日本陶磁協会賞」の選考委員会が開かれました。当日の出席者は、梅澤、唐澤、黒田、中ノ堂、宮島、森、弓場、吉田の8名で、欠席者(金子、西田、長谷部)に対しては、前もって再選を済ませていただきました。
金賞候補につきましては、ここ2、3年、加藤氏が金賞受賞者と激しい接戦を繰り返しておりましたが、今回は2位の鯉江氏、3位の中里氏を引き離して高い点数を獲得されましたので協議の結果、出席者の全員一致で加藤清之氏の金賞が決まりました。加藤氏は、愛知県ではじめての金賞受賞者です。
協会賞候補につきましては、杉浦康益氏、武腰潤氏、三輪和彦氏の上位3名で争われましたが、再選の結果、武腰氏と三輪氏が同点数でしたので、協議の上、両者を協会賞に決定いたしました。有力候補の杉浦氏は、昨年「パラミタ陶芸大賞」を受賞され、すでに大きな評価を得ておられますので、そうしたこともあって逆に三輪氏に点数が入ったものと思われます。
今回、金賞に選ばれた加藤清之氏の推薦理由は、「加藤氏の作品は一つのポエジーであり、絵画である。その繊細な造形は古瀬戸のもつ繊細さにも通じて奥が深い。中世のやきもののもつ力強さは外形的なものだけではなく、加藤氏の作品にも同じ力強さをその繊細さの中に感じる。ここ数年、金賞候補に挙がりながら逃してきたが、2005年に愛知県陶磁資料館で開催された「加藤清之展」で示したように、その陶歴は器からオブジェまで幅広いものであり、瀬戸を代表する陶芸家として金賞候補にふさわしい。」というものでした。
協会賞の武腰潤氏の推薦理由は、「現代九谷を代表する作家で、その実力のほどは伝統工芸展ほかのこれまでの賞歴がすでに証明しているが、今年はニューヨークでのフェアでも高い評価を得た。造形中心の現代陶芸の中にあって、伝統の色絵を現代的感覚で表現、さらに色絵の常識を破って窯の中での釉の流れを計算に入れ、新しい色絵世界に挑戦している。」というものでした。
三輪和彦氏の推薦理由は、「兵庫陶芸美術館での巨大なインスタレーションは、しばらく忘れていたやきもののスケール感を改めて実感させるもの、近年の磁器、クラフトなどの〈軽いもの〉指向には、一方でこうしたアプローチが必要。」「素材〈大量の土〉と格闘した末の大型陶造形に対他存在的な自己表現を明確にした。」「3年間のアメリカ留学から帰国後、萩焼の陶土、技法を世界的な造形美術の視点に立って表現し高い評価を得ている。」などの理由が寄せられました。
なお、杉浦康益氏の推薦理由は、「パラミタの人気〈大賞〉がややマイナス作用に。でも大活躍。」「博物誌のシリーズ、彩文俑、形象香炉のシリーズと、土で造形することに止まぬ意欲を感じる。」「昨年から今年にかけての仕事は他を圧して情熱を傾注して非凡。」などの理由が寄せられましたが。さらに今後の活躍に注目したいと思います。
それでは、受賞者3名の陶歴をご紹介します。
■加藤清之(金賞)
1931年 愛知県瀬戸市に生まれる。
1950年 愛知県立瀬戸窯業高等学校卒業。
1964/65年 「朝日陶芸展」大賞受賞。
1967年 「日展」特選北斗賞73特選受賞。
1970年 日本陶磁協会賞受賞。
1973年 「現代工芸の鳥瞰展」(京都国立近代美術館)。
1979年 愛知県芸術選奨文化賞受賞。
1984年 「第6回日本新工芸展」内閣総理大臣賞受賞。
1995年 「日本のスタジオクラフト・伝統と前衛」展(英・V&A美術館)。
1998年 「挑発する器とその作家たち」(草月美術館)。
1999年 ギャラリーファール(パリ)にて個展開催。
2000年 日本の現代展(パリ)。
2002年 現代陶芸の100年(岐阜県現代陶芸美術館)。
2003年 「白磁・青磁の世界展」(茨城陶芸美術館)。
2004年 「瀬戸陶芸の精華」(瀬戸市美術館他)。
2005年 「土から生み出すかたち造形の軌跡 加藤清之展」(愛知県陶磁資料館)。
2006年 現代日本陶磁器展(ニューヨーク)。
■武腰潤(協会賞)
1948年 石川県に三代武腰泰山の長男として生まれる。
1970年 金沢美術工芸大学日本画科卒業。
1982年 現代美術展最高賞受賞(87年、93年、96年審査員、88年委嘱特別賞)。
1986年 箱根彫刻の森美術館賞受賞。
1987年 伝統九谷焼工芸展優秀賞受賞(91年大賞、96年大賞、97年20周年記念大賞、98年大賞受賞)。日本新工芸展審査員(89年審査員、94年審査員)。
1988年 オーストラリア建国記念選抜展外務省買上。明日をひらく日本新工芸展大賞受賞。
1990年 日展金沢展奨励賞受賞(91年特選、94年特選)。
1998年 一水会陶芸部参加硲記念賞受賞。
1999年 石川県指定無形文化財九谷焼技術保存会会員となる。
2002年 日本伝統工芸展朝日新聞社賞受賞。
2004年 日本伝統工芸展奨励賞受賞。
2006年 「インターナショナル・アジアン・アート・フェア」出展(ニューヨーク)。
■三輪和彦(協会賞)
1951年 山口県萩市に11代三輪休雪の三男として生まれる。
1975年 サンフランシスコ・アート・インスティテュートに留学。
1990年 「土の発見─現代陶芸と原始土器」(滋賀県立陶芸の森)。
1992年 日本の陶芸「今」百選展(フランス、三越)。
2000年 「三輪和彦の茶室・黎─REI─」(山口県立萩美術館・浦上記念館)。
2001年 「三輪和彦の白き花冠展」(高島屋)
2002年 「アジア太平洋現代陶芸展」(台北現代陶芸美術館)。
2003年 現代陶芸の華─響きあう色とかたち─(茨城県陶芸美術館)。
2004年 滋賀県立陶芸の森創作研修館ゲストアーティストとして制作。
2005年 「京畿道世界陶磁ビエンナーレ2005」(韓国)。疎通と拡散─韓中日国際陶芸交流展─(ミラル美術館・韓国)。田中寛コレクションと現代の陶芸(兵庫陶芸美術館)。
2006年 「花冠展─地、天を指す─」(高島屋)。「日本陶芸100年の精華」(茨城県陶芸美術館)。「陶芸の現在、そして未来へ Ceramic NOW+」(兵庫陶芸美術館)。「パラミタ陶芸大賞展」(パラミタミュージアム・三重)。「PALT FORM 06」(秋吉台国際芸術村・山口)。
なお、平成18年度日本陶磁協会賃受貰記念展は、7月28日(火)から8月1日(水)まで銀座・和光ホールにて開催されます。また、受賞式は初日の7月28日の予定。詳しくは、追ってご通知いたします。
▼平成19年度の会員のための陶磁研究会を次のように開催いたします。
[4月研究会]
「志野と織部─風流なるうつわ」
場所 出光美術館(干代田区丸の内3-1-1)
日時 4月12日(火)午前10時半より 講義室
講師 同館主任学芸員・荒川正明氏(入館料千円のみ、参加費無料)
出光美術館所蔵の志野、織部など美濃陶器のコレクションが今回初めてまとまったかたちで公開されます。さらに、国宝1件(卯花墻)、重要文化財3件(峯紅葉、山端、鼠志野鶴鴒文鉢)や、生産地(元屋敷窯、牟田洞窯)、消費地(京三条柳之馬場)から出土した陶片なども展示されます。
[5月研究会]
「ペルシア陶器」
場所 松岡美術館(港区白金台5-12-6)
日時 5月9日(水)午前10時半より
講師 同館学芸員・後藤修氏(入館料のみ、参加費無料)
なお、6月以降は追って掲載いたします。参加ご希望の方は電話もしくはFAXで日本陶磁協会事務局(電話03-3292-7124/FAX03-3292-7125)までお申込みください。
▼2007「東美アートフェア」が3月16日(金)、17日(土)、18日(日)の三日間、東京美術倶楽部にて開催される。春は絵画と近代美術が中心だが、和泉玉箒堂、銀座黒田陶苑、渋谷黒田陶苑は現代陶芸作家の作品を出品する。詳しくは、東京美術倶楽部(電話03-3432-0191まで)。
▼4月21日(土)に北鎌倉の東慶寺において湘南支部会を行います。当日は陶芸家の川瀬忍氏を招いて「青磁について(仮)」の講演が催されます。お申し込みは湘南支部事務局(電話0467-46-2776)、もしくは協会本部(山本)まで。