やきもの界ニュース 『陶説』2021年8月号より

有田焼タイルを使った外壁が復活

平成28年(2016)の熊本地震で被災した商業ビル・大劇会館(熊本市)が、復旧工事に伴い、タイル張りの外壁を復活させました。
大劇会館は昭和44年(1969)にチェコ出身の建築家、アントニン・レーモンドの事務所が設計。タイル張りの外壁はレーモンド夫妻がデザインしましたが、1990年代にビルをリニューアルする際、化粧板で覆われて見えなくなりました。
今回の復旧工事を進める中で7割以上のタイルが残っていることが判明し、3年がかりで復元。6万5千枚にもおよぶ濃紺や赤茶色の有田産のタイルが幾何学模様を描き出す、レトロモダンなデザインの外壁が復活しています。今回、修復で必要となった分は有田で制作されました。
地上7階建ての同ビルの壁面(縦20メートル、横31メートル)は、レーモンド作品の中でも最大級の大きさです。

「砥部むかしのくらし館」リニューアルオープン

愛媛県砥部町などで収集した、江戸末期から昭和中期までの民俗資料を集めた「砥部むかしのくらし館」(砥部町大南)が、リニューアルオープンしました。
同館は現存する最も古い砥部焼の窯元の、古民家と蔵を改装したミュージアムです。日本有数の夜着(よぎ)のコレクションをはじめ、木製の看板、竹かご、地元の砥部焼など約5万点のコレクションを展示しています。
中央部分が吹き抜けになっている2階建ての蔵は、大正時代に砥部焼の収蔵庫として使われていました。昭和29年(1954)には柳宗悦がバーナード・リーチとともに訪問。その後も柳の支援で砥部を訪れた芸術家らが陶工に日用食器の美を伝えました。

場所:愛媛県伊予郡砥部町大南701
電話:089―962―5258
開館時間:10時~16時 開館日:土曜日・日曜日
料金:無料

工房を「シェア」して若い陶芸家をサポート

共同工房「シガラキ・シェア・スタジオ」(甲賀市信楽町)では、主に外から来る陶芸家や美術家にスタジオを貸し出しています。町中心部の旧信楽伝統産業会館裏の、もとは陶器卸業の店舗と倉庫を改装した建物に作業スペースを整え、電気窯やガス窯などの設備が揃っています。
料金はひと月あたり18000円から23000円。今後は若手の陶芸家を中心としたギャラリーも開設します。

住所:滋賀県甲賀市信楽町長野1140
電話:0748―82―690

田中本家博物館運営支援のクラウドファンディング

北信濃屈指の豪商の館と言われ3千坪の敷地に20の蔵を備えた屋敷が、田中本家博物館(長野県須坂市)として生まれ代わり29年。代々使用されてきた生活の品々、そして陶磁器や漆器、書画など美術工芸品を展示公開してきました。新型コロナウイルスの感染拡大によって、来館者が年間2~3万人が昨年は5千人となり開館以来最大の危機にさらされています。そこで年間運営費3千万円の10分の1にあたる3百円の寄付を募る、クラウドファンディングが行われています。集まった資金は2022年3月末までの運営費として使います。締め切りは8月13日(金)。寄付額のコースやリターンほか詳細はサイトをご参照ください。

髙島屋創業190周年記念 悉皆―風の時代の継承者たち―

本展では、決して失ってはならないモノ作りの精神と伝統を将来へ繋いでいくことを目的として、髙島屋のアーカイヴスである髙島屋史料館収蔵作品や髙島屋にまつわる歴史を題材に現代のアーティスト29名が制作した新作を展示。時代や表現方法を超え、美が姿を変えながらも新しい時代・空間へと継承されていく様を披露します。陶芸作家では、今泉今右衛門・増田敏也・和田的の3氏が出展します。
髙島屋巡回先
日本橋 2021年8月4日~17日
大阪 2021年9月29日~10月5日
京都 2021年11月24日~30日
横浜 2021年12月15日~21日
新宿 2022年1月19日~31日

酒器と日本酒をテーマにしたギャラリー「小灯」がオープン

手燭のような小さなあかりを意味する「小灯(こともし)」
やきものや漆器、ガラスなど工芸作家を取り上げるオンラインサイトpanoramafilamentで紹介されている作品を展示販売しています。このギャラリーの特徴は、酒器と日本酒をテーマにしていることで、現在は週末に予約制で開いています。
住所:東京都新宿区新宿2―4―2 カーサ御苑602

「益子×セントアイヴス100年祭」イベント

先月号のニュース記事に掲載した「益子×セントアイヴス100年祭」のイベント「ましこ市2021」の一環として勉強会が開催されます。
◎勉強会「作り手から見るリーチ、イギリス陶芸」
日時:9月11日(土)13時30分より  講演「河井寬次郎が出会った仲間たち」
話し手:鷺珠江氏×聞き手:濱田友緒氏
座談会:「日本の作り手に聴く スリップウェアの魅力」前野直史氏×伊藤丈浩氏
◎勉強会「リーチと濱田60年の交流」
日時:9月12日(日)13時30分より  講演「バーナード・リーチと濱田庄司」
講師:鈴木禎宏氏
座談会:鈴木禎宏氏・濱田琢司氏
場所:濱田庄司記念益子参考館4号館
参加費:無料(要入館料)

訃報

白磁作品で世界的に知られた黒田泰蔵氏が4月13日に逝去されました。享年75歳。『陶説』次号(820号)にて追悼特集を組みます。

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