やきもの界ニュース 『陶説』2022年8月号より

原爆で変型した瓶を波佐見焼で再現

長崎県美術館で、「祈りの花瓶展2022─ナガサキを忘れない─」が開催されています。
この「Vase to Pray Project」は、かつて長崎に投下された原爆についての理解を深めるため、デザイナーの毎熊那々恵さんが起案して2017年に始まった、平和を祈るためのアートプロジェクトです。原爆の熱風で変型した瓶を3Dスキャンし、それを波佐見焼で忠実に再現した「祈りの花瓶」を展示し、鑑賞者は直接手にとって触れることもできます。
今回の展示では、ウクライナの人々による「平和のビデオメッセージ」も上映しています。
会場:長崎県美術館(運河ギャラリー)
日時:~8月15日(月) 10時~20時(最終日は18時まで)会期中無休
観覧料:無料

萩焼・坂高麗左衛門十四世襲名

旧萩藩御用窯として知られる萩焼の宗家「坂窯」で、坂高麗左衛門の十四世を先代の長男、坂悠太氏が襲名しました。
襲名の個展は再来年を予定しています。

大美特別展―美にふれる、美を愛でる、美とあそぶ

本展は西暦2000年の記念行事としてスタートし、3~4年に1度、大阪美術商協同組合に加盟する美術商により開催される展示販売会です。第8回となる今回、全国64の美術商により茶道具・古美術・書画・絵画・仏教美術・刀剣・西洋美術・近現代美術など幅広い作品が出品されます。
日時:2022年9月2日(金)~4日(日)10時~18時 *最終日は16時まで
会場:大阪美術倶楽部 大阪市中央区今橋2―4―5 ☎06―6231―9626
入場料:無料
公式ウェブサイトはこちらから。

以下に一部の店舗の展示内容を紹介します(50音順)。
◇井上オリエンタルアート GINZA(ブース1F―9)
奈良三彩壺(緑・白釉)ほか、日本・中国・朝鮮の陶磁器を中心に出品。
◇しぶや黒田陶苑(ブース2F―3)
「天衣 黒田辰秋展」を開催。木工芸の人間国宝、黒田辰秋の作品を、茶器を中心に展示。本展はその後、9月23日~10月2日に渋谷の店舗で、10月7日~15日に魯卿あん(京橋店)にて開催予定。
◇谷松屋戸田商店(ブース1F―1)
墨蹟など、桃山時代の茶道具を中心に出品。
◇前坂晴天堂(ブース2F―30)
「~百花繚乱~古伊万里の世界」を開催。鍋島・古九谷・柿右衛門・古伊万里・初期伊万里など、肥前有田磁器の優品を多数展示販売。

江戸~明治時代のやきもの、荻之島焼を展示

瑞浪市陶磁資料館(岐阜県)で、荻之島焼(おぎのしまやき)と箱館焼を紹介する展示が開催されています。
荻之島焼は、江戸時代後期から明治時代前半にかけて、瑞浪市釜戸町荻之島地区内の窯で焼かれた磁器製品(主に染付磁器)。その生産を手がけていた足立岩次(いわじ)(1816~89)が、輸出向け製品として生産に関わった「箱館焼」の磁器とともに展示しています。 会場には、瑞浪市陶磁資料館の所蔵品である箱館焼の染付唐草文湯呑や染付風景文皿、荻之島窯から出土した碍子(がいし)・エンゴロ(匣鉢(こうばち))など6点と、足立岩次の子孫から借り受けた、染付鳳凰文香炉や火鉢などの荻之島焼5点が飾られています。借り受け品5点については、2023年3月末まで観覧可能です。

「柳宗悦の心と眼」展シンポジウム

「『朝鮮とその藝術』刊行100周年記念 柳宗悦の心と眼―日本民藝館所蔵 朝鮮関連資料をめぐって―」展が、駐日韓国大使館 韓国文化院ギャラリーMIにて9月14日(水)~10月1日(土)に開催されます。これにあわせて左記のとおり、シンポジウムが行われます。なお本展覧会は、日本民藝館「柳宗悦と朝鮮工芸 陶磁器の美に導かれて」(9月1日~11月23日)、滋賀県立陶芸の森陶芸館「静中動:韓国のスピリットをたどる―開かれた陶のアート」(9月17日~12月18日)との関連展覧会となっています。
日時:9月17日(土)午後1時~5時
会場:韓国文化院 ハンマダンホール
 東京都新宿区四谷4―4―10
内容:
講演(杉山享司・日本民藝館常務理事、芹生春菜・東京藝術大学学術インストラクター、田代裕一朗・獨協大学非常勤講師、片山まび・東京藝術大学美術学部教授〈講演順〉)
上映会「日本民藝館物語(第2章 柳宗悦 信と美を求めて)」、座談会、特別討論(咸舜燮・国立大邱博物館館長) (敬称略)
定員:300名(要申込、1人2名まで)
料金:無料
申込期間:~9月4日*お申込み開始は、8月初めの予定
申込方法:韓国文化院ホームページの応募コーナーから申込み(会員登録〈無料〉が必要)、定員超過の場合抽選。

「旅する古伊万里」―戸栗美術館×東急百貨店本店 連携企画

戸栗美術館の開館35周年記念特別展「古伊万里西方見聞録展」(『陶説』2022年8月号101頁参照)にあわせて、隣接する東急百貨店本店でも古伊万里の企画が開催されます。

◆「~江戸から明治~海を渡った日本の美展」
内容:日本に里帰りした華やかな古伊万里、精緻な技が光る蒔絵や薩摩焼など、日本美術の逸品を取り揃えて展示販売します。
会場:東急百貨店本店 8階 美術ギャラリー
会期:9月1日(木)~9月14日(水)*最終日は17時閉場
◆「元祖 むかし昔の食器展」
内容:江戸時代より大切に受け継がれてきた色とりどりの古伊万里の食器を多数取り揃え展示販売します。
会場:東急百貨店本店 8階 美術ギャラリー
会期:9月29日(木)~10月12日(水)*最終日は17時閉場
◆「古伊万里テーブルコーディネート」
内容:空間デザイナー・佐藤由美子氏が手がける古伊万里を使用したテーブルコーディネートを展示。
会場・会期:戸栗美術館および上記2つの会場・会期にて展示(展示内容はそれぞれ異なります)。
◆ランチトークショー
内容:戸栗美術館「古伊万里西方見聞録展」の展観・学芸員の解説の後、東急百貨店本店のなだ万茶寮での古伊万里によるランチ&トーク(学芸員)、その後、美術ギャラリーでの古伊万里の展示観覧。
会場:戸栗美術館、なだ万茶寮・美術ギャラリー(東急百貨店本店8階)
日時:①9月5日(月)10時~ ②10月3日(月)10時~
料金:19,000円
定員:各15名(先着順)
申込方法:こちらは定員に達したため、受付終了となりました。ご了承ください。

※このほか、MARUZENN&ジュンク堂書店・丸福珈琲店の関連企画や「古伊万里西方見聞録展」半券サービスなどがあります。詳細は特設サイトを参照ください。

第42回伝統文化ポーラ賞

本賞は無形の伝統文化の分野で貢献し、今後も活躍が期待できる個人または団体に対し、更なる活躍と業績の向上を奨励することを目的としています。第42回の平成4年度において陶芸関係では、佐藤典克氏(神奈川県)が、白磁の制作・伝承にて奨励賞を受賞されました。なお、「第42回伝統文化ポーラ賞受賞者記念展」が12月10日(土)~12月18日(日)にポーラミュージアムアネックス(東京・銀座)において開催されます。

第31回工芸美術「日工会展」

陶磁・漆芸・染織・金工・木工・皮革・硝子・七宝・人形・紙芸の分野の工芸作品を全国より公募する本展において、陶芸関係の受賞作品は以下の通りです。

文部科学大臣賞
「昇光」小林英夫(京都)
日工会大賞
「搖らぐ」昼馬和代(大阪)
日工会会員賞
「流星」池上猛(富山)
「想」羽鳥律子(新潟)
「江戸沖浪裏」市川富美子(東京)
日工会賞
「カフカ」大和宏(山口)
日工会奨励賞
「オニキス」辻口諒路(愛知)
「The Vanishing(滅びゆくもの)」寺田朝子(静岡)
(敬称略)

古民家ギャラリーがクラウドファンディング

築200年近い古民家を改装したゲルト・クナッパーギャラリー(茨城県大子町)が、クラウド・ファンディングを通して、活動再開と環境整備のための資金協力を呼びかけています。
同ギャラリーは、ドイツ人陶芸家、故ゲルト・クナッパー氏が1970年代に江戸時代の古民家を購入し、長い年月にわたって改修したもの。以来さまざまな展覧会やイベントを開催してきました。
ところが新型コロナウィルス感染拡大により2019年秋より開店休業状態を余儀なくされ、3年にわたってほぼ収入がない状態が続きました。
今年の秋に3年ぶりとなる展示会イベントを開催するにあたり、クナッパー邸整備および展覧会開催のための支援を募っています。期間は8月30日まで。詳細はこちらのサイトで

訃報

陶芸家尾形香三夫氏が7月18日に逝去されました。1949年北海道岩見沢市生まれ。
独自の練上技法により独特な造形の作品を制作し、2016年には第1回日本陶磁協会 現代陶芸奨励賞を受賞され、近年はニューヨークや香港でも作品を発表し、活躍しておられました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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公益社団法人 日本陶磁協会

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