2023(令和5)年度 日本陶磁協会賞・金賞のご報告

◆2023年度 日本陶磁協会賞・金賞受賞記念 加藤亮太郎・三代 宮永東山展のご案内◆
会期:2024年10月21日(月)~26日(土)
会場:壺中居  東京都中央区日本橋3-8-5

『陶説』10月号(No.854)に掲載がございます。


全国の美術ジャーナリスト、ギャラリスト、研究者、陶芸家(過去の陶磁協会金賞受賞者)を中心に構成された推薦委員117名より候補者を挙げていただきました。その候補者に対し10名の選考委員が事前投票を行ったうえで、2024年2月5日(月)に開催した選考委員会において、投票結果上位者の中から日本陶磁協会賞及び金賞受賞者を選出しました。

◆2023(令和5)年度日本陶磁協会賞・金賞◆

日本陶磁協会賞 加藤亮太郎[かとう・りょうたろう]

受賞理由

茶道や書を学び、それらが活かされた作品が、近年充実を見せています。正統派の茶陶を手掛ける作家としての期待を込めて、選出されました。

経歴

1974年
七代加藤幸兵衛の長男として生まれる
2000年
京都市立芸術大学大学院陶磁器専攻修了
2012年
「越後妻有アートトリエンナーレ」(新潟)
2014年
「パラミタ陶芸大賞展」(パラミタミュージアム/三重)
2015年
幸兵衛窯八代目を継承
2016年
「幸兵衛窯歴代展」(古川美術館/愛知)
2017年
引出用穴窯を築く
2018年
興福寺中金堂落慶法要にて千宗屋氏による献茶道具として奈良三彩天目を制作
2019年
「幸兵衛窯歴代展」(とうしん美濃陶芸美術館/岐阜)
2021年
岐阜県芸術文化奨励賞受賞

日本陶磁協会賞金賞 三代 宮永東山[みやなが・とうざん]

受賞理由

京都において、長く第一線で作品制作を続けてこられた功績と、その作品の足跡を辿る近年の展覧会にて多くの方に評価されたことで、選出されました。

経歴

1935年
二代宮永東山の息子として京都に生まれる
1958年
京都市立美術大学彫刻科卒業
1960年
渡米。メキシコからニューヨークに入り、翌61年、アート・スチューデント・リーグで学ぶ
1962年
行動美術協会会員となり69年まで所属
1964年
「現代美術の動向」(国立近代美術館京都分館)
1970年
走泥社同人となる
「現代の陶芸:ヨーロッパと日本」(京都国立近代美術館)
1979年
「今日の日本陶芸」(デンバー美術館/アメリカ)
1995年
「ジャパニーズ・スタジオ・クラフツ」(ヴィクトリア&アルバート博物館/イギリス)
1998年
京都府文化賞特別功労賞受賞
1999年
三代宮永東山を襲名
2001年
「京都の工芸―1945-2000」(国立近代美術館/京都、東京)
2008年
京都市芸術功労賞受賞
2023年
「三代東山展―宮永家の人々―」(思文閣/京都)
2024年
京都府文化賞特別功労賞受賞

2023年度 日本陶磁協会賞・金賞受賞者選考経緯

2023年度「日本陶磁協会賞・金賞」の選考委員会を2024年2月5日(月)午後3時より、新宿・安与ホールにて開催しました。選考委員の出席者は、赤沼多佳、石﨑泰之、伊藤潔史、伊藤嘉章、唐澤昌宏、川島公之、黑田耕治、瀬津勲、中ノ堂一信、森孝一の10氏でした。
選考に先立ち、美術館・博物館の学芸員、美術ジャーナリスト、ギャラリー関係者、陶芸家(金賞受賞作家)で構成された117名の推薦委員が、協会賞・金賞それぞれ3名まで候補者を選定し、協会賞157名、金賞44名を推薦しました。その上位者のリストを推薦(得票)数を伏せたかたちで選考委員に渡し、投票を行ったのち協議検討のうえ決定しました。

日本陶磁協会賞

推薦委員の方々による選定の結果、協会賞の候補は以下のとおりになりました。[得票数および氏名、カッコ内は金賞カテゴリでの得票数]
・13票 川端健太郎
・12票 加藤亮太郎
・10票 稲崎栄利子(1)
・7票 近藤高弘(2)・見附正康
・5票 澤谷由子・高橋奈己
・4票 五味謙二・高橋朋子・戸田浩二・林茂樹
・3票 石橋裕史・猪倉髙志・小枝真人・津金日人夢・津守愛香・中原幸治・長江重和・藤笠砂都子・森山寛二郎
・2票 阿曽藍人・安永頼山・池田省吾・井上雅之(4)・今泉毅・上田勇児・氏家昂大・鹿児島睦・梶原靖元(1)・川上力三・古賀崇洋・後藤秀樹・小林佐和子・竹内紘三・田中佐次郎・田淵太郎・辻村史朗(4票)・堤展子・富田美樹子・橋本知成・福本双紅・古谷和也・松田共司・松本ヒデオ・牟田陽日・村上躍・若杉聖子
・1票 アイザワリエ・荒川真吾・猪飼祐一・井口大輔・井倉幸太郎・泉田之也・市川博一・市野信水・稲吉オサム・今井眞正・今西公彦・伊村俊見・岩村遠・上田直方・植松永次(1)・梅津庸一・大石早矢香・大原光一・小川裕嗣・岡晋吾・岡田優・岡本作礼・奥直子・奥村巴菜・小野哲平・加藤智也・川井雄仁・岸野寛・木村芳郎(1)・金徳姫・久保田厚子・後関裕士・齊藤勝美・酒井智也・酒井博司・佐伯守美・坂本章・坂本拓磨・西条茜・佐藤雅之・澤田勇人・柴田雅章・島袋常秀・島村光(2)・清水俊彦・下沢敏也・末廣学・鈴木秀昭・鈴木まこと・須浜智子・清麻里・高田谷将宏・高柳むつみ・高力芳照・田中悠・田上真也・田原崇雄・玉置保夫・谷穹・竹内君則・豊増一雄・中井川由季・中村康平・中村清吾・中村和樹・中田雅巳・中田博士・中里太亀・十四代中里太郎右衛門・中里月度務・西端正・野口寛斉・橋本昌彦・八田亨・林恭助(1)・林康夫(8)・東田茂正・日野田崇・福島武山・古川拓郎・星野曉・星野友幸・真清水蔵六・桝本佳子・松林豊斎・丸田宗彦・三上亮・七代水野半次郎(1)・道川省三・南野馨・南正剛・森本良信・森山雅夫・矢野直人・矢部俊一・山口剛・山口真人・山田浩之・山田洋次・山田和・山野千里・山本佳靖・山本亮平・吉村茉莉・米田文・米田和・若林和恵・渡辺愛子 (五十音順)

得票数上位11名の候補者について、推薦委員の推薦理由を以下に抜粋します。
川端健太郎
「一見、日本の伝統的陶芸作品とは全くかけ離れた作品を制作しているように見えるが、透明釉の成分であるガラス、また同じく釉薬に含まれる銅や鉄を個体として粘土に練り入れるなど、陶芸の基本を違う視点から考察し、自分自身の表現としている点が素晴らしい。また粘土を通して、内から湧き出てくるような造形ができる数少ない作家であると思う」
「自身の内面の無意識部分を曝さらけ出しているような、手て 捻びねりのどこか生々しい造形と、ガラスや鉄、銅の質感が組み合わさった他にない表現を確立している。淡々と制作し、自身の世界を作っている」
「生命感あふれる無二の作風。磁土という御し難いなかでの、アクロバティックな造形とディテールの表現をなせる人。経歴も充分である。技法技術的なところも突出している」

加藤亮太郎
「名のある窯元の出身であるが先代や先々代の追随ではなく、美濃の歴史を踏まえた志野や瀬戸黒に加え、造形的な仕事や書とも関連した作品など、精力的に創作している」
「美濃焼の伝統的茶陶を制作しつつも、さまざまな釉薬による茶碗を精力的に制作。その姿勢とともに作品も素晴らしい」
「ここ数年は、重量感のある作品を世に送り出してきた印象があるが、昨年後半に東京で行われた展示会で見かけた薄手の引出黒や小ぶりな茶碗には驚いた。これまでの作風に、日本の美学ともいえる引き算が加わり風格が感じられた。伝統を受け継ぎながらも、柔軟に新たな挑戦を続けている姿勢も素晴らしい」
「美濃焼の名窯である幸兵衛窯の八代幸兵衛でありながら桃山陶の再現に尽力し、また、新たなる美濃焼を産み出すことに果敢に挑戦し、絶え間なく実行している点」

稲崎栄利子
「世界中のどこを探しても、彼女の超絶技巧に太刀打ちできる作家はいない。20年以上にわたり細密な表現を突き詰めてきたその探究心と忍耐力は、評価に値する」
「その特異な手法ばかりが注目されがちだが、ミクロがマクロに通じる、この世界の成り立ちの根源を解き明かそうとする制作姿勢を評価したい」
「繊細な造形を極めた、卓越した技術と独自の作品世界で着実に評価されてきた作家であるが、ロエベ財団クラフトプライズ2023大賞受賞など国際的なコンペでも実績を残し、本年の受賞にふさわしい」
「手で触れることが難しい極微細なパーツによって構成されながら、作品のフォルムは『可変』。これまでにない陶磁器の造形を新たに切り拓いたインパクト絶大である」
「超絶技巧的な作品が近年陶芸界の注目を浴びる以前から、ひとえに自身の感性あふれる幻想的な創造の世界を、神業的な技量をもって精緻な作品として生み出し続ける特異な陶芸家である。この世界のトップランナーとして、さまざまな展覧会に招待され活躍している」

近藤高弘
「時代性を捉えた陶のコンセプトワークで海外を中心に評価を得ている。近年は陶芸的概念を再考しながら、陶芸とアートを往還した多彩な表現でめざましい活躍をしている」
「代々続く京都の家系で磁器染付の習得から出発した近藤氏は、自身のルーツと向き合いながら陶芸の本質を問いかけてきた作家である。水を陶芸(炎)で表すというコンセプトを核に銀滴彩や青磁を手がけ、一方で大壺や茶碗づくりから、うつわの本性や身体性を追求してきた。その道程は、陶芸をアートとするのではなく、あくまで陶磁器製作に必要な高い技術と本質を見失うことなく別次元の表現へと挑戦し、世界と対峙しようとするものであった。氏の表現活動の是非はもっと議論の俎上にのるべきで、活動のスケール感に対して金賞にふさわしいと考え、ここに推薦する」(金賞推薦文)

見附正康
「赤絵細描という伝統的な技法を用いて、現代的な表現を確立し工芸に対する見方を変革した」「赤絵の伝統的な技術や文様を現代の清新な表現として更新させた作家が、今日の陶芸に対する新しい愛好家層や視線を育む上で果たした役割は大きく、その功績は受賞をもって認められるべき」

澤谷由子
「繊細で表情豊かで優美な表現と、究極に細やかな筒書き。また、透光性の高い磁土を使い、基本的に自身で制作した素地を、最新の注意を払いながら薄く磨き上げ、要所には細やかな削りを入れ、その装飾性を高めている。その素地に筒書きが加わることで唯一無二の作品となっている」

高橋奈己
「鋳込みによる白磁は、独自の揺らぎのある有機的な造形を生み出しており、茶の湯のうつわではさらにその造形が洗練されて、近年魅力を増している」
「植物の種や実をモチーフとして、ヒダの陰影が美しい白磁作品を作る。型から出した作品を磨きに磨き、エッジが立ったフォルムを作り上げ、そこに彼女らしい緊張感が生み出されている」

五味謙二
「縄文土器に触発された量感のある作風を築き上げてきた作家であるが、最近は異分野を含む展覧会に選ばれるほど需要の幅が広がってきている。今までの功績と今後の展開を期待して推薦する」
「陶芸における焼成の重要性と、可塑性や重力といった土の造形にまつわる要素を最大限に可視化した制作に思考と実践の純度を見る」

高橋朋子
「加飾にさまざまな工夫がなされ、その妙が面白い。今後の活躍がますます期待される」「伝統工芸にベースを置きつつ、金銀彩の現代的解釈を提示している」

戸田浩二
「陶芸の表現が多様になっていくなか、シンプルに力強い表現に軸足を置き続ける姿勢は、今後の陶芸界の行く末を思う中でも貴重な存在である」
「造形美の黄金比とでもいうのだろうか。実に隙のない寸法比率を見せる。古のカタチを極限まで研ぎ澄まし、より鋭く繊細に、細部にもつよい拘こだわりを見せる。薪窯でこれほどまでに緊張感に満ちた作品はない」

林茂樹
「鋳込成形によって彼独自の世界観を高い完成度で実現している」
「大量の型により各々のパーツを鋳込み成形し、人体を組み立てる。磁器ならではの輝きと質感が陶芸であることの必然性を示す。その緻密な作業には膨大な時間が投じられている。若手作家からも強い支持を得ており、陶芸の未来を変えていく可能性を備えた作家」

以上の結果とともに、得票数の上位者の陶歴、推薦委員による推薦理由および作品の写真など、資料を選考委員の方々に送り、候補者を1位(3点)、2位(2点)、3位(1点)で選定していただきました。
選考委員による投票点数は、以下の結果となりました。
17点 加藤亮太郎
11点 近藤高弘
10点  稲崎栄利子・川端健太郎
7点  見附正康
3点  五味謙二
1点  高橋奈己・戸田浩二

さらに推薦委員の得票数の1位(川端氏)に3点、2位(加藤氏)に2点、3位(稲崎氏)に1点を加算した結果、最終順位の上位3名は
19点  加藤亮太郎
13点  川端健太郎
11点  稲崎栄利子・近藤高弘
となりました。

加藤亮太郎氏・川端健太郎氏・近藤高弘氏ともに、1位に推挙した選考委員が3名ずつと同数でしたが、その中で加藤氏を2位に推す委員が3名、3位に推す委員が2名おられ、他の両氏をリードする結果となりました(近藤氏は2位が1名、川端氏は3位が1名)。
協議の結果、得点数1位の加藤亮太郎氏を今年度の協会賞と決定しました。
受賞理由は、茶道や書を学び、それらが活かされた作品が近年充実を見せていること、また正統派の茶陶を手がける作家としての期待を込めての選出となりました。

日本陶磁協会賞金賞

推薦委員の方々による選定の結果、候補者は以下のとおりになりました(推薦者の多い順に掲載、カッコ内は協会賞の推薦者数)。

金賞も協会賞と同様に、推薦委員の方々による選定の結果、候補は以下のとおりになりました。[得票数および氏名、カッコ内は協会賞カテゴリでの得票数]

・10票  三代宮永東山
・9票  中里隆
・8票  中島晴美・林康夫(1)
・5票  福島善三・三原研四票  井上雅之(2)・内田鋼一・辻村史朗(2)
・3票  市野雅彦・金重晃介・重松あゆみ・前田正博
・2票  八代清水六兵衞・近藤高弘(7)・島村光(1)・滝口和男・武腰潤・田嶋悦子・中村錦平・松田百合子
・1票  安倍安人・伊勢﨑淳・板橋廣美・伊藤秀人・稲崎栄利子(10)・植松永次(1)・大嶺實清・小野哲平・梶原靖元(2)・木村盛康・木村芳郎(1)・小池頌子・神農巌・杉本貞光・林恭助(1)・林邦佳・原憲司・福間琇士・福森雅武・美崎光邦・七代水野半次郎(1)・森岡成好・吉川正道

得票数上位9名の候補者について、推薦委員の推薦理由を以下に抜粋します。

三代宮永東山
「戦後陶芸の第二世代を代表する作家のひとり。行動美術協会での彫刻的抽象表現から走泥社以降の青白磁や色泥でい漿しょうまた吹ふき墨ずみなど、幾何学的形体を軸にした作風を展開。戦後、陶芸が大きな変貌を遂げてゆくなか、その第一線に身を置き新たな表現領域を拓いた。また、後進の育成やJAC会員として国際交流にも尽力するなど、日本の陶芸界に大きな足跡を残している」
「宮永氏の造形精神は前衛的であり、吹墨、白青磁、影いん青ちん、交こう趾ち 式の上絵具を用い、造形と伝統的な陶磁の枝法の融合を目指した。特に、白青磁の細調が幾何学的なフォルムと調和した作品の造形は美しい」
「陶芸家として青白磁における先進的な表現を確立しただけでなく、京都の前衛陶芸や窯業システムといった面の、語り部としても重要な役割を果たしてきた。現代陶芸史において欠かすことのできない存在である」

中里隆
「国内各地で開催する個展をはじめ、毎年のように海外で制作を行うなど、バイタリティーあふれる制作活動は驚嘆に値する。鴨徳利や小品の器などには、87歳という年齢を感じさせない端々しい感性が存分に発揮されていると思う」
「唐津焼と唐津の町の文化レベルへの貢献や国際的な活躍も含めて、金賞に値すると思う」
「躍動感のあるロクロ挽きの作品は芸術性が極めて高く、その存在感は別格である。若い頃から国内外で積極的に作陶活動を行い、日本の陶芸を世界に広めた功績は大きい」
「国内外で異なる陶士による多様な表現を手掛けるなど、唐津焼の新たな可能性を広げている。何物にもとらわれない大らかさと日常を楽しむ姿勢が表れた作品は、多様な表現が混在する現代において普遍的な力に溢れている」

中島晴美
「門下生が多く作家として広く活躍し、その指導という点でも大きな功績を残していることに疑いはない。それも自身が第一線で作家としての活動を一瞬たりともおろそかにせず、エネルギーを発して維持してきたからに他ならない」
「今までなしえることができなかった手捻りの技法で磁土を立ち上げた作品が高い評価を受けており、また陶芸家の育成にも力を入れて数多くの作家を育ててきた功績は大きい」
「陶の可塑性を生かした造形を確立し、現代における陶芸のひとつの潮流を生み出した。また、後進の育成にも多くの労力を費やし、産地の活性化にも大きく貢献している」

林康夫
「戦後いち早く、陶芸の革新を目指して創作活動を開始。その姿勢は現在まで貫かれている。戦後の陶芸史上欠かすことのできない作家。指導者としての功績も大きい」
「一貫して芸術性を重視し、非実用的な陶芸の可能性を追求しながら、1962年から1977年までは走泥社にも参加している。二次元(平面)と三次元(立体)が複雑に交錯する、極めて独創的な作品は見る人を四次元のイメージまで誘い込み、確かな存在感と驚きに満ちていて、国内外で高く評価されている」
「1948年に発表した黒釉(雲)は、日本最初の陶立体作品として認知されている。1972年ファエンツァ国際陶芸展グランプリ受賞等、国際的にも日本陶芸の位置を知らしめた作家であり、1960年代には二次元と三次元を融合したような作品を手掛けるなど、意欲的な発表を続けてきた。日本の誇れる陶芸家の一人である」

福島善三
「長年努力精進され優れた業績を残し、後進の指導育成においても継続的に努力し実積をあげている」
「産地の中にあっての陶芸活動と、質の高い作風は地域の陶芸等にも多大な影響を与えている」

三原研
「古代から現代まで見渡せど、類似した作品はない。氏独自の卓越した造形感覚。曲線と直線から生み出される炻器ならではの肌合いから生まれる面の構成力。その存在感は尋常ではない」
「現代性に富み、造形の追究に余念がない。バリエーションに富んだ、しかも完成度の高い作陶を長年にわたって展開している。まだまだ新たな可能性が感じられる」

井上雅之
「1980年代以降の陶芸シーンの牽引者のひとりとして活躍を続け、多摩美術大学の教授として多くの後進の教育に携わってきた。その功績は大きい」
「1980年代は現代における日本陶芸の基盤を形成した時代ととらえることができるが、その時代の作家活動を始め、今日に至るまで精力的に制作し、その一翼を担い続けている。長年にわたる業績を顕彰し、その意義を陶芸界工芸界で分かち合いたい」

内田鋼一
「作品の素晴しさはもとより、私費で運営するBANKOアーカイブデザインミュージアムなど地域への貢献や、ものづくり、窯業へ愛情を注ぐ姿は立派で尊敬する」
「各地のギャラリー等で精力的に個展を開催し、加彩、線刻文、掻落、三彩、緑青から白しら瓷し、焼締等の技法で大壺・茶盌そして食器まで発表。また一方でBANKOアーカイブデザインミュージアムを開館し、いろいろな企画で人々を魅了している。20代から現在まで一貫した制作態度と引き出しの多さは、たぐいまれな存在である。54歳と陶芸界では中堅に属する立場ではあるが、陶芸というジャンルを超越した人物であると思う」

辻村史朗
「国内外、また工芸界のみならず美術の世界でも高い評価をされている。グローバルな時代において、世界に日本の陶磁器の魅力を発信し、伝える功績は計り知れない」
「志野を中心とした桃山茶陶への積極的な挑戦。とりわけ、志野茶碗の多作ぶりは、ある意味ではお家元を頂点とする茶道へのアンチテーゼになった」

以上の結果とともに、得票数の上位者の陶歴、推薦委員による推薦理由および作品の写真など、資料を選考委員の方々に送り、候補者を1位(3点)、2位(2点)、3位(1点)で選定していただきました。選考委員の投票点数は、以下の結果となりました。

18点 三代宮永東山
12点 中里隆
8点  中島晴美
6点  井上雅之
5点  辻村史朗
4点  林康夫
3点  三原研

さらに推薦委員の得票数1位(宮永氏)に3点、2位(中里氏)に2点、3位(中島氏・林氏)に1点を加算し、最終順位上位3名は
21点 三代宮永東山
14点 中里隆
9点 中島晴美
となりました。
1位に三代宮永東山氏を選んだ選考委員は6名、中里隆氏は2名、井上雅之氏と辻村史朗氏が1名でした。協議の結果、得点数1位の三代宮永東山氏を今年度の金賞と決定しました。受賞理由は、京都において長く第一線で作品制作を続けてきた功績と、その作品の足跡を辿る近年の展覧会にて多くの方の好評を博したことが高く評価されました。

以上が、2023年度日本陶磁協会賞と金賞の選考結果報告です。次に、今回の候補者の推薦の労をいただきました推薦委員は以下のみなさまです。候補者名ならびに、ていねいな推薦理由を頂戴いたしました。心よりお礼申し上げます。

推薦委員

青野惠子(銀座一穂堂)、青山和平(ア・ライト・ハウス・カナタ)、秋山陽(金賞作家)、芦刈歩(茨城県陶芸美術館)、阿曾一実(阿曾美術)、石上賢(BE OWND)、市川文江(ギャルリ・プス)、市来真澄(山口県立萩美術館・浦上記念館)、伊藤慶二(金賞作家)、伊藤泰二郎(備前焼ギャラリー青山)、伊藤達信(スペース大原)、井上隆生(ジャーナリスト)、入澤聖明(愛知県陶磁美術館)、岩井美恵子(国立工芸館)、上西節雄(研究者)、梅田稔(ギャラリー器館)、榎本徹(陶磁研究家)、小笠原啓子(ギャラリーおかりや)、岡本安次(ギャラリー壺屋)、隠﨑隆一(金賞作家)、加藤清之(金賞作家)、金重有邦(金賞作家)、川上智子(多治見市文化工房ギャラリーヴォイス)、川北裕子(パナソニック汐留美術館)、川口勝也(川口陶楽苑)、川瀬忍(金賞作家)、北山学(高島屋大阪店)、栗原浩之(うつわや涼一石)、栗本洋(ぎゃらりい栗本)、鞍田崇(明治大学 理工学研究科准教授)、纐纈幾世(ギャラリーこうけつ)、後藤修(山口県立萩美術館・浦上記念館)、小西哲哉(中長小西)、小橋由佳(ギャラリー夢幻庵)、小林建夫(現代工芸藤野屋)、小吹隆文(美術評論)、小山登美夫(小山登美夫ギャラリー)、坂本大(ラパンアートオフィス)、坂本直樹(GALLERY 一番館)、櫻井正朗(元婦人画報副編集長)、佐藤京(Sato Art Office)、佐橋浩昭(ギャラリー数寄)、沢田眉香子(サワダ企画)、柴田裕介(HULS Gallery Tokyo)、島崎慶子(菊池寛実記念智美術館)、清水穣(同志社大学)、下村朝香(西宮市大谷記念美術館)、祥見知生(祥見)、正村美里(岐阜県美術館)、進藤尚子、光本真子(水犀)、杉江寿文(スペースとこなべ)、杉山道夫(シガラキ・シェア・スタジオ)、杉山道彦(光芳堂)、鈴田由紀夫(佐賀県立九州陶磁文化館)、髙木崇雄(工藝風向)、髙木延子(うつわ一客)、高橋秀治(豊田市美術館)、田中敦子(工芸ライター・編集者)、寺田ひと美(寺田美術)、徳留大輔(出光美術館)、外舘和子(多摩美術大学)、友成星紀(池袋東武百貨店)、富山剛成(ギャラリーNOW)、名村実和子(茨城県陶芸美術館)、西川勲(ギャラリーにしかわ)、西川寛(ギャラリーマロニエ)、野入昭吾(神戸阪急美術部)、野崎潤(銀座たくみ)、野原歩(縁煌)、服部文孝(瀬戸市美術館)、花井素子(岐阜県現代陶芸美術館)、花里麻理(茨城陶芸美術館)、林いづみ(岐阜県現代陶芸美術館)、林佳名(Silver Shell)、林大介(水戸忠交易)、原和志(うつわギャラリー唐津草伝社)、比嘉立広(那覇市立壺屋焼博物館)、広瀬一郎(桃居)、深井桂子(Keiko Art International)、深見陶治(金賞作家)、福島昌子(資生堂アートハウス)、福田和弘(鶴屋百貨店美術部)、福田朋秋(京都髙島屋美術部)、福冨幸(岡山県立美術館)、藤田裕一(現代美術艸居)、古家昌伸(元・北海道新聞美術記者・フリーライター)、堀江知宏(画廊文錦堂)、前﨑信也(京都女子大学家政学部生活造形学科)、前田昭博(金賞作家)、鈎真一(滋賀県立陶芸の森)、松本健一(ギャラリー栄光舎)、松本佐英子(岩田屋三越 工芸・文化)、松本武明(ギャラリーうつわノート)、マルテル坂本牧子(兵庫陶芸美術館)、丸山石造(美術工芸アトリエヒロ)、三浦努(鳥取県立博物館)、御手洗照子(t.gallery)、宮川智美(京都国立近代美術館)、十三代三輪休雪(金賞作家)、三輪龍氣生(金賞作家)、村上豊隆(日本民藝協会)、目黒伸良(目黒陶芸館)、森野泰明(金賞作家)、森谷美保(インディペンデント・キュレーター)、諸江洋(九谷焼 諸江屋)、八木光惠(アート・コート・ギャラリー)、矢崎孝子(館游彩)、安田尚史(柿傳ギャラリー)、山木城治(アートサロン山木)、山﨑哲也(ギャラリー山咲木)、山根正夫(巷談舎)、山本忠臣(gallery yamahon)、横堀聡(益子陶芸美術館)、横山裕人(銀座和光美術部)、吉澤敬子(ギャラリー白)、米原有二(京都精華大学伝統産業イノベーションセンター)、ロバート・イエリン(ロバート・イエリンやきものギャラリー)
以上117名(敬称略)

公益社団法人 日本陶磁協会

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